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2015年4月20日 (月)

余部橋梁物語 僕らの町に汽車がやって来た 第35夜

皆様こんばんは、私の与太話にお付き合いただきありがとうございます。
本日は、餘部鉄橋物語35夜となりました。

昨日は、「さとし」が放った言葉が大きな石となって猫尾の背中にのしかかってきたのですが。その答えを導いてくれたのはある子供の一言でした。
さて、どんなお話になるのでしょうか、お楽しみに。

> 「俺は何のために働いているんですか?」
>
猫尾は、相変わらず自問していました。そして、気がつくと手が休んでしまう自分にはっとしながらも取り合えず仕事をを済ませようと草むしりに熱中していたのでした。

朝からの作業の結果夕方頃には、草ぼうぼうの山の斜面はすっかり雑草が取り除かれ、所どころに木々が残っているのでした。
これらの木々もいずれ撤去する必要があるのですが、現状を見ただけではここに本当に駅が出来るのか否か誰にも想像だにつきません。

猫尾たちの一向は、工事道具を片付けると、先ほど草むしりをした斜面に腰掛けてタバコをくゆらせるのでした。
未青年のさとしは、タバコを吸えないのですが、猫尾は気になるのでさとしを彼の近くに座らせるのでした。

猫尾は、出来るだけ優しい語りで。

「おい、さとし、今日も一日終わったな、どうだ働く意味は判ったのか?」

 「・・・」さとしは、無言で首だけを横に振るのです。

「何だよ。さとし、何も言わないと判らないだろう。」

 「・・・」下を向いて、やはり何も言いません。やがて小さな声で、
 「判らないんだよ。」
ぶっきらぼうに、わざと言おうとすると余計に悲しく聞こえるのでした。

そんな折、地元の小学生でしょうか。何人かが草むしりをした現場に入ってきて口々に叫びます。

 「ほらな、俺が言った通りだろ。ここに駅が出来る工事が始まったんだって。」

親分はだのガキ大将の次郎が自慢げに語ります。

 口の悪いある人夫は、ガキ大将に意地悪するように、それでいていたずら心一杯に、

「おい、坊主。ここに駅なんか出来ないぜ、ここの草刈をして終わりさ。」

ある人夫が子供をからかうと、次郎は真剣な顔で反論するのでした。

 「うそだい、ここに駅が出来るって聞いたんだ、ここに駅が出来たら俺ん家の父ちゃんみたいに汽車にはねられてなんていう悲しい事故はなくなるんだ。

 横で、人夫との会話を聞いていた猫尾が思わず身を乗り出します。

「おい、坊主。おまえの父ちゃんは亡くなったのか?」

 「死んじゃいねぇ、でも足が動かなくて働けないんだ。」
「お母ちゃんは、だから毎日、必死で働いているんだ。」

猫尾は更に畳み掛けるように、次郎に声をかけるのでした。
「お母ちゃんが働いてるのか、それは大変だな。」
そして、ガキ大将の次郎は、でもお父ちゃんはいつも言っていた。

父ちゃんは、保線区で働いていたんだ。
何時もいつも、雨に日も風が強い日も、みんなのためだから、国鉄のため、家族のため俺は頑張るんだと言っていたんだけど、仕事中に列車に触れて怪我をしたんだ。

それでも、親父は俺に、いつも「人の役に立つ仕事しろよ」というんだけどよく分かんなかったんだ。

「きっと、おじさんたちの仕事が人の役に立つ仕事なんだろうな。」

その言葉を聞いた瞬間、猫尾にパッとフラッシュが焚かれたようなそんな錯覚を覚えたのです。

「そうか、それだったのか。」

猫尾は、独り言を呟いたのでした。
実は、親方が最初に猫尾の前で同じような話をしていたのですが、その時はただなんとなく「これは仕事だからなぁ」とぼんやり聞いていた自分がすごく恥ずかしくなるのでした。

さて、この続きはまた明日にさせていただきますImage33106

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