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2015年11月 5日 (木)

Let the journey in 1970 Part5

前回の御話で、猫次郎の父が思い出話をしていたところで終わったと思うのですが

> また、夜の貨物列車に車掌として乗務していた頃、おんぼろの車掌車に泣かされた事など等・・・

「貨物列車に乗ったときは大変でした。」

「お客様は、貨物列車なんかに乗ったことはないでしょうね。」

猫次郎は当然乗ったことも無いので、

「残念ながら、乗ったことはありません。」

「そうでしょうね、貨物列車の車掌車はそれはひどいものです。縦揺れ。横揺れこれが周期的に、そしてときには複合して来るのですから。

さらに、貨物列車の車掌車は小さな電球だけですから車内は薄暗くて、特に冬場なんかは早く夜が明けて欲しいと祈ったものですよ。

冬場は石炭ストーブが唯一の暖房器具ですが、先輩に聞くと、終戦当時は石炭も不足していたので当然車掌車に回す石炭も無く、その上戦時中に酷使した車掌車はがたが来て、隙間風は入り放題で、
「緩急車【車掌車と貨物室が一体になった車両】じゃなくて、寒泣車(かんきゅうしゃ)」だったとよく聞かされたそうです。

猫次郎は、戦後大量に作られ、桜木町で大きな事故を起こした悪評高い73形通勤電車に乗ったことを思い出していました。

和歌山の親戚の家に遊びに行った時で、冬場だったので日が暮れるのも早く7時すぐにはもう真っ暗でした、天王寺駅に待っていたのはオレンジ色に塗られた3段窓の古いタイプでした。

関東の方ではもう走っていないよな、いや南武線に僅かに残っていたかしらなどと思いながらも、ニスの匂いとう床に塗られた油のにおいを嗅ぎながら猫次郎はリュックを網棚に載せて固めの座席に腰を下ろしたのでした。

103系を見慣れた猫次郎からすれば、ドアの中心部に立つポールや、少な目のつり革、そして何よりも薄暗い室内、蛍光灯の数が少ないためかなり薄暗いのです。

発車間際になるとそれなりに人が乗ってきて満員とはいえないまでも、そこそこ乗った電車はやがて天王寺を出発し、伯父がまつ和歌山に歩を進めていったのですが、鳳を過ぎるとこの電車は乗客が極端に少なくなるとともによく揺れるようになりました。

電車の車内には、1両に数人しか乗っていません、その上改造された3段窓は隙間風がびゅんびゅん、桜木町事故で改造された貫通路には扉は無くて風は先頭車から最後尾に向かって流れるジェットストリーム・・・時々風に飛ばされて最後部まで飛んでいく人が・・・流石にそれは冗談ですが、貫通扉が無いため、隙間風が加速するようで、これこそ寒泣車だったなと思いかえして一人苦笑していました。

そんな猫次郎を見て、38年前の猫次郎が

「何を思い出し笑いしているんだい」と問いかけます。

「いや、昔子どもの頃に和歌山の伯父さんの家に行ったんだけど、その時乗った阪和線の電車が寒泣車だったなと」

38年前の猫次郎にすれば、将来自分が経験するであろう話を聞いてしまったわけであり、和雄車掌にすれば、桜木町事故直後のことと思ったのでしょうか、さらに饒舌になって話かけてくれるのでした。

「お客様の仰ってるのは、桜木町で起こった火災事故のことですか?」

「ええ、そうです。」猫次郎は適当に言葉を合わせ手置いた。

「私もあの事故のことは覚えていますよ。大変な事故でした。」

さらに車掌は、猫次郎も詳しくは知らない話を延々としてくるのでした。
「真中の桟が固定されていたうえ、ドアもガラスを節約するために三分割、その上満員であったため貫通扉が開かない【当時、関東の電車は原則的に別の車両に渡れないようになっていた。】ので、多くの方が焼け死んだと聞いています。」

そうなんですか、猫次郎は相槌を打ちながら聞き、ふと窓外に目をやった父親は、猫次郎に対し、

「お客様、申し訳ありません。話は尽きないのですが少し席を外させていただきます。」

「お仕事のお邪魔でしたら帰りますので。」

「いえ、岡山で下車されるお客様がおられますので、今から起こしに行くのです。寝過ごしては、元も子もないですから。」

「それでは、失礼します。」

父は、息子である猫次郎に対して最大限の礼を尽くして、車掌室を出て行きました。

猫次郎は、さて38年前の自分はどこにいるのかと思ってふと振り向くと彼の姿もどこにも見当たりません。

おかしいなぁ、どこに行ったのだろうか。
そう思いながら、長い廊下を自室の寝台がある1号車に向かって歩き始めたのでした。

さて、このお話の続きは、また別の日にTc79_naniwa させていただきます。

皆様、おやすみなさい。

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