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2017年7月10日 (月)

機関助士 佐倉一郎の思い出話 自律編

みなさま、こんばんは。
ほぼ1か月ぶりの投稿でございます。
公安官夜話を連載しようと思ったのですが、その前に何話佐倉君の物語を書いてみようということで、第2部スタートさせていただきます。

約3か月の見習い期間中は色々ありましたが。あっという間に過ぎて。
無事一人前の機関助士として勤務できるようになったのがほんの1ヶ月ほど前。
一人前の機関助士と言われても、まだまだ駆け出しのひよっこですから。

時々機関士の雷が落とされます。

今のように丁寧には教えてくれません。
見よう見まねで、技は盗むんだ…そんな時代でした。
機関士が手取り足取り投炭の方法なんて教えてくれません。
まして、運転の仕方なんて・・・教えてくれるはずはありませんから、投炭しながら運転の様子をチラ見しながら何となくその動作などを覚えていくのでした。

やはり機関助士になったら機関士になりたいのは誰でも一緒ですから。
といっても、やっと機関助士として独り立ちしたばかりですから、佐倉君本人が不安でいっぱいです。

佐倉君のペアとなった大倉さんは良い人なんですが、口が悪いので、助士仲間からは怖がられていたのです。

見習い期間も終わり正式にペアが決まってみると、佐倉君の機関士は大倉さんだったのです。
というのも、大倉さんと一緒に組んでいた機関助士が晴れて機関士に昇格したからでした。

ペアが大倉さんと決まったとき、佐倉君にしてみればなんでまた…そう思ったものでした。
それを察したのでしょう、助役が

「佐倉さん、大倉さんは確かにぶっきらぼうで口も悪いと皆さん言いますが、大倉さんの運転技量は抜群で、前任の機関助士も大倉さんの運転を真似て抜群の技量らしいと、評判です。佐倉さんもぜひ、大倉さんの技量を真似て立派な機関士になってください。」

そう言われると、佐倉君もそれ以上は嫌な顔も出来ません。

そんな経緯があったのです。

それでも、最初の頃の乗務では殆ど大倉さんは口をきいてくれません。
本当に必要最小限に事しか言わないのです。

元々どもる癖があったのですが、それを同僚の機関士にからかわれてから余計に喋らなくなったのでした。
それでも、ペアとして仕事する以上はやはり無視するわけにもいきませんし、まして佐倉君は機関助士としての立場ですから当然と言えば当然でした。

無視されても挨拶だけは続けるのでした。
毎度毎度きちんと挨拶されることで、大倉機関士も佐倉君に心を開くようになっていたのです。

浜田機関士も素晴らしい運転を見せていましたが、大倉機関士のブレーキ技は本当に神技と言ってもよいようなもので、勾配区間などでは抑速ブレーキと呼ばれる、下り勾配で一定の速度で下れるように電気ブレーキをかける方式がありますが、大倉機関士はそれを蒸気機関車でしてしまうのでした。
この方式は補給制動と呼ばれるものでしたが、大倉機関士はこの補給制動が非常に上手かったのです。
この方式を上手く使えば、殆どショックを与えないで勾配を下ることが出来るのですが、こうした運転方法は現在のようにマニュアル化されたものはなく機関士の勘と経験によるものだったのです。

補給制動は直接大倉機関士からは教えてくれませんでしたが、同僚の機関助士から教えられたのでした。

「佐倉の大倉機関士は補給制動の名手らしいんだ。」

 「補給制動?」

「佐倉、お前一緒に乗務していて教えてもらっていないのか?」

 「大倉機関士は無口なんで・・・。」

「そうか、お前普通に汽車に乗っていて時々急にスピードが下がってから再び加速したと思ったらまたブレーキがかかってなんてこと経験ないか。」

 「良く乗り合わせるよ」

「それじゃ、大倉機関士の時はどうだ、そんな風に感じるか・・・?」

 「そう言われたら、殆どショックを感じないしブレーキ弁を握ったままだよ。」

「そうなんだよ、それは大倉機関士が補給制動といって、少しづつブレーキを弁を微妙な位置に置くように操作しながら運転しているんだそうだ、そうすることで、乗り心地の向上と石炭の消費も減らせるそうだ。」

そう言われて、改めて大倉機関士の凄さを思い知らされた佐倉君だったのです。

続く
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