文化・芸術

2016年8月10日 (水)

とある物語。ハンプと連結手 第7話 最終回

> 助役も、真面目な青年がさらに上を目指そうとしていることに喜びを感じたのでした。
>  「佐藤君、頑張ってくれよな。君のような優秀な若者が将来の国鉄を支えるんだ。」
> 優秀と言われてはにかむ佐藤君でした。
> 次回は最終回、佐藤君はその後どうなるのでしょうか?

しばらくして、佐藤君は助役に対して。

今一度一礼すると、「失礼しました」というとドアを開けて小走りに持ち場に戻っていくのでした。

佐藤君にしてみたら、怒られると思ったらむしろ逆で、車掌の試験を受けて見られるように配慮してみようと言ってくれたことが嬉しくて仕方ありませんでした。

でも、正式に試験を受けられるかどうかも判りません、でも助役がそう言ってくれたことが嬉しかったのも事実です。

ほっぺを抓ってみたら痛かったので、夢ではないなぁということは判ります。
でも、やっぱり未だに半信半疑です。

詰所に戻ると既に出払っていました、佐藤君も急いで、地下足袋に脚絆を巻いていつもの持ち場に戻ります。

昭和30年代は、安全靴などなくて、連結手はみんな、地下足袋に脚絆を巻くのが一般的でした。

詰所を出てしばらくすると、貨車を留置させて戻る先輩に鉢合わせしました。

彼は、森という名前なのですが、豪放磊落な性格で、職場からは清水の次郎長に出てくる森の石松みたいということで、「石松」とあだ名で呼ばれていました、本人も気に入っているようで、自ら「石松」と呼んでくれという始末。

そんな、森先輩が声を掛けます。

「清、助役に呼ばれたようだけどこっぴどく油を搾られたのか?理不尽なこと言ってきたんなら俺に言って来いよ。助役を吊るしあげてやるから・・・。冗談とも本気ともつかない調子で笑います。」

彼は組合の分会役員をしているのですが、若いこともあって血の気が多いのが玉に瑕です。それ以外は本当の後輩の面倒見もよいのですが・・・。

「あ、森さん」
と言いかけて、慌てて「石松さん」と言いなおします。
最初、曇っていた顔がニッコリ晴天マークに変わります。
本名で呼ばれるよりも、ニックネームで呼ばれるほうが嬉しいようです。

ただ、まさか、車掌の試験を受けてみるかと言われたとも言えず、曖昧に誤魔化していました。

彼もそれ以上言わず

「清、今日も多いから事故するなよ」

一緒に待機場所まで戻っていきます。

それから数日後、再び清は、助役に呼び止められます。

 「佐藤君、先日の話ですけどね、一度試験を受けてみますか。手続きはこちらで済ませておきますから。」

そう言われて、いよいよ佐藤君は上機嫌です。
「ありがとうございます。」

助役に深々と頭を下げる清でした。

清は、駅員らに混じって、車掌の試験を受けることとなりました。
試験は、さほど難しいことは無く、試験も無事合格する事が出来たのです。

試験の結果は2週間後に助役から口頭で伝えられました。
いよいよ、清は連結手から、いきなり車掌として勤務することになったのです。

いよいよ今日が清の最後の勤務でした。
清が、車掌になるということに驚いたのは、職場の同僚たちでした。
仕事の合間の待機時間はその話題で持ちきりです。

やっかむ者も居ましたが、多くの先輩は喜んでくれました、一番喜んでくれたのは、森いな、石松でした。

「清、良かったなぁ。車掌になっても俺たちのこと忘れないでくれよ。」

少し、目に涙を浮かべながら、森が笑います。

清も、もらい涙で

「先輩。・・・・いや、石松さん、本当にありがとうございました。」

清が叫びます。

「本当に、本当に良かったなぁ。車掌になってもここでの仕事のこと思い出せよ・・・。」

口々に他の先輩たちも声を掛けます。

助役は、詰所の外からそんな佐藤君を見て、本当に良かったなぁと思うのでした。

めだとくそれを見つけた佐藤君は、

「みんな、ちょっと待ってね。」

そう言うと、慌てて詰所を飛び出して、助役に深々と頭を下げるのでした。

助役はそんな佐藤君を見て。

改めて、「おめでとうございます。車掌の仕事はお客様が相手の仕事です。気苦労も多いでしょうが、佐藤君なら立派に務まると思います。ぜひ頑張ってください。」

そう言って握手を求めるのでした。

佐藤君は、上司からここまで丁寧に接しられることに慣れていませんでしたので恐縮してしまいます。

いよいよ、朝からは佐藤君の新しい人生が始まろうとするのでした。

長い間お読みいただき、ありがとうございました。

083963

2015年6月 8日 (月)

鉄道公安官物語 第9夜

Img_0406 皆様こんにちは、今日は夜勤ですので少し早めに投稿させていただきます。
試験まで日がない・・・でもどうすれば・・・。

あせりながらも考えた苦肉の策、教科書丸覚え作戦。
追い詰められた白根ですが、どうなったのでしょうか。

試験まで後2日、白根はただひたすらに教科書を読んでいました。それこそ、何度も何度も。トイレにも、はたまた風呂に入るときまで・・・・さすがに湯船では読みませんでしたが。

そんな調子でしたから、きれいだった本はやがて手垢で汚れ異様に膨らんで変形していました。
さらに、ページをめくると赤いラインや黄色のライン、その上から赤いラインを引いたからなのか変に緑色になったラインなども所々に見られます。
さらには、本の端には細々と汚い字で書き込みがありました。

決してきれいな本の使い方ではないのでしょうが、案外これが効果をもたらしたのです。

試験当日、大きな不安と少しばかりの期待を込めて試験に挑む白根でした。

試験の解答用紙が配られ、次に試験問題が問題を伏せたまま配られてきます。
白根は緊張で心臓がばくばくするのを禁じ得ませんでした。

教官から試験に対する注意がありました。
試験時間は50分、試験途中の退出は認めない、教室の時計を基準の時計とすることなどが伝えられて、時計を見るとすでに時刻は9:00ちょうどをまさに指そうとしていました。

「それでは、かかれ。」

教官の声で試験は始まりました。
白根は、問題を一通り目を通してみました。

最初は全くわからないと思っていた問題ですが、じっと問題文を読んでいると問題の重要点等が浮き上がって見えるのでした。

あれ、もしかしたら・・・この問題って、教科書にかかれていた内容を少し変化させたものだよなぁ。

この問題は、設問が逆になってるだけで教科書に例題が載っていたような。

白根は思わず微笑んでいる自分を感じていました。

中には全く歯の立たない問題もありましたが、そのような問題は無理に解答せずに時間をかけて行わないで、さらっと流していきました。

やがて、教官の声で、「試験終了」と言う声が聞こえてきました。

答案は、先ほどと反対に最後部の席から前に順次解答欄を裏側にして先頭の席に送られるのでした。

さぁ、資格試験等であればこれで開放となるのでしょうが、公安官の試験は1日で全教科を行うのでこれからが始まりなのです。

ぞっとした思いとこれで、研修生活も終わるんだと思うと少しうれしくなってくる白根であった。

この続きはまた後程

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